神道名門の誇りを胸に 立教180年記念大祭

 
 
 

■ 立教180年記念大祭(納祭) 教主挨拶

■ 立教180年記念大祭 宵宮神事・大祭式典の様子




(2020.10.14)




■ 立教180年記念大祭 教主挨拶

笑み栄える

心安き寿々風の世を拓け

神道禊教教主管長 坂田 安弘


立教百八十年を奉祝しての大御祭の全てを、今茲に厳修いたしました。

私たちは、ご教祖様、先師の神霊たち、そして百八十年の間堅固なる信心を相続して下さった祖霊の御前に、その御遺志を戴して、教団史上初めての全国同門中を挙げての立教を寿ぐ大御祭を、信心相続の堅固なることの証として、また心で栄える心安き新時代を拓き行く誓いの証として勤めあげました。

本来は、四月十日に宵宮神事を厳修した後に、四月十一日、十二日、十八日、十九日には、東京本部大教会門中はもとより、全国分院代表者がご教祖様の御前に集い祝賀大祭をつとめ、四月二十六日に、この納祭を奉仕する予定でした。この納祭こそ門中無参列で、常日頃本部神殿に通い神明奉仕をしている神職神教士(子)たち全員が集い装束を身に纏い、拝殿の全てを浜床としてご教祖様と先師の神霊たちに報恩感謝の誠を捧げる予定でした。しかし、世の中はコロナ禍によって国家緊急事態宣言が発出され、コロナ感染症の感染拡大予防の観点から、全国で集会の自粛を余儀なくされ、四日間の祝賀大祭のみならず、この納祭も幹部三役と本部職員のみの祭典奉仕での斎行となりました。この納祭こそ、拝殿の全てを斎場浜床として奉仕をするので、祭儀部長以下上席三役を始め、神教子全員で伝供をもって祭典奉仕する姿を、ご教祖様にご覧に入れたかったのですが、コロナ禍によりそれも叶わず、まことに残念でなりません。教団史上初めての全国を挙げて立教を寿ぐ大御祭が、斯様なることとなったことは無念の極みでもあります。しかし、国家緊急事態宣言も一度は延長されるも、全国民の自粛努力の結果、宣言解除は当初の予定より一週間早まり、教団本部神職三役の奉仕を得て斎行できました事は、本教の「法難の歴史に終止符を打ち新時代を拓く」という我らの決意を、神明が聞こし召された証であると喜ぶところです。神明と御教祖神の大御心に報い奉る為にも、二十年後の立教二百年祭に夢と希望を繋ぎ行きたいと思うところです。

コロナ禍によって、思うに任せぬ立教百八十年記念祝賀大祭ではありましたが、心の時代への転換の年の始めに、心は時空を超えて馳せ、身はこの場に集えずも、心は一堂に馳せ会することができるということを証立てられたことは、私の喜びの極みでもありました。全国分院からも、自分たちが参列する予定であった大祭当日に、分院で神前に座して祈りが捧げられたことが、写真も添えて報告されてきました。また、東京本部大教会の神教子たち、女子神職なでしこ会の諸子からもSNSやメールを通じて心を一つにして同時刻に祈りを捧げるとの声が届けられ、後に家族や孫が家の神殿に座って祈る姿も報告されて来ました。まさに、心で栄える心安の世、心の時代の到来を表している立教記念祝賀大祭となりました。

身は離れ居るとも、心を馳せ報恩感謝の誠を捧げ示してくれた信心堅固なる同門中方に心から敬意と感謝を申し上げる次第です。

私も、その心を自らの力として、本日より誓いを新たに、立教二百年の祝賀大祭へ向けて、ご教祖様の立教の本義である「神祇大道復興・大和國風復興・救世済民叢生安寧」の実現へ向けて、また「心安き寿々風の世を拓く」為に、自らの使命でもある古式祭祀復興と教学の充実を目指して、以後更なる精進御修行祈願をお誓い申し上げるところです。

本年正月二日に、私は「新しい価値観へと社会は転換する」「物の時代から心の時代」へと大きく変化が始まると伝えました。今、社会を脅かしているコロナ禍は、まさにその引き金を引きました。価値観を変えられない私達に、否応なしに変化を求めました。そして社会は、確実に価値観を根底から変え始めました。

今、私達が新たに価値を見出し始めていることは、安心と共感ということです。そして家族と共同体の絆です。このこと、特に家族の絆については、本年正月に伝えた「弥栄への指針」に揚げました。今までの社会は、安全であることに社会の成熟の目標を置いていましたが、安心と安全こそが人の、そして社会の幸福の基であることに今、社会は気付き始めています。人はどんなに安全な社会に暮らして居ても、安心を得られなければ幸福を感じることはできません。現代は、特にこの日本国の社会は安全な社会です。しかし、コロナ禍によって安心社会ではないことに気付きました。安全は物によってもたらされ、安心は心によってもたらされるものです。産業革命以来人類が築いてきた社会は、優劣の社会でもありました。優劣は物によって決められ、安心は心によってもたらされます。そして安心の基となるのは共感でもあります。まさに、今社会は世界的に安心と共感の社会へと大転換を成そうとしています。

今、世の中では、社会的距離(ソーシャルディスタンス)をとることが求められています。これはコロナ禍の終息後も求められることでしょう。その社会的距離は、心によって縮めることができます。それを私たちはこのコロナ禍の最中の大祭で立証しました。また、絆の大切さ、心で繋がり続けることの大切さも同時に学びました。

更に、大切な人を守る気概と覚悟というものを、天はコロナ禍によって私達に求めたのです。そしてルールやマナーを自ら守るということを求めました。それこそが、社会を守ることとなり、自分は社会そのものであるという、大なるものを包含する自己への気付きも求めました。そうした天の求め、社会的価値観の転換は、今後の私達の行動を大きく変容させることでしょう。皆を思って、自覚ある行動、責任ある行動、家族を守る、命を守るという行動に価値を見出す時代となるのです。それが安心を生み、心安の世を作り出すのです。

その為に、私達はこのコロナ禍にあって、自らの行動を省みて戒める、家族と他者を思いやるという、利己と利他の均衡による人格に価値を見出す社会へと大きく一歩を踏み出し始めるのです。利己は必ず心を病みます。何故なら心のベクトルが内向きなのであるから、全てのものを自らの中に抱え込んでしまうからです。それでは祓いとなりません。ですから、手放す勇気が求められるのです。それが祓いです。それは古事記の神話に明らかです。その時に人との繋がりの重要性を知ることができます。そして、安心を手に入れることができるようになるのです。信心は、この安心を求めるところに始まるものなのです。

コロナ禍は、私達に生活の取捨選択を否応なしに迫りました。まさに祓いを求めてきたのです。「不要不急」という言葉で物事を選別して私達はこの二カ月を過ごしたことでも明らかです。この二カ月の自粛生活は、私達に本当に生活に必要なものは何か。そして必ずしも必要でないものは何かの選別を迫りました。その選別は「コロナ前」と「コロナ後」では大きく変化することでしょう。その結果、生活は「本当に必要なもの」に絞られ、大幅な消費縮小がもたらされますが、一方で必要なモノとコトに生活が絞られるので、多くの余暇時間を人々は持つこととなるでしょう。現在のテレワークなどがそれを端的に表しています。人々は余暇をどう有意義に過ごすかを自らに問うこととなり、心の有様が問われることとなりましょう。その時、御利益を貰いたいという信仰から、人格完成の為の修練と鍛錬の「道」としての信仰が求められるようになり、時と場所を超えて繋がる社会が始まるのです。それこそが、真の宗教への覚醒の始まりです。本教が法難の中に身を置き、そして黒鐵の如くに打ち鍛えてきた「道」の始まりです。それはコロナ禍後の恐慌と混乱の後に現実となることでしょう。現実的な問題として、この自粛で在宅を余儀なくされ暇を持て余す人が少なくありません。当面の生活に心配がない人であっても、時間を有意義に過ごすために苦慮しています。そして、オンライン会議のツールが多用され、社会全体が場所を超えた繋がりの社会へと変わろうとしてます。今までとは全く異なる新しい文化的動きが始まることでしょう。まさに心の時代を象徴するかの如き「非接触型」の社会文化が「社会的距離」という言葉と共に動き出していることは事実です。それは、学び、心を錬り、自らを高めるという真の宗教の時代の始まりです。私は三十年という年月をかけて、その準備を行ってきました。まさに「今時は来り」との感を受けているところです。

コロナ禍による自粛生活は、私たちの日常生活には、いかに不要不急のものが多かったかを見つめさせてくれました。そして、社会の安心の為に「自らを律する」ことの大切さを教えてもくれました。ここ数年に私が正月二日に伝えてきた「弥栄への指針」をもう一度紐解いて読み直して頂きたいところです。

コロナ禍の後に、今までの日常が戻ってくることは無いでしょう。東日本大震災後の復興を見ればそれは解ることです。新しい基準(ニューノーマル)が作られて行くのです。その基準となることは、「愛」であり「理解」であり「気遣い」であり「思いやり」です。それこそが「大和の国風」である「傍楽心」です。このコロナ禍を、単なる一過性の疫病の爆発的流行と思ってはいけません。この世のこと全てを学びとして、私達は常に成長を遂げて行かねばなりません。このコロナ禍を「天風」「神風」として自らの心の帆に受けて、コロナ禍後の世を禍吹く世ではなく、皆が安心して共感し合う寿々風吹く世にして行かねばなりません。

私はこの一連の立教祝賀大祭にあって、ご門中お一人お一人の顔を思い出しながら「明日あなたに会うために私は今日あなたに会わない」と心に語り掛け過ごして参りました。

明日の寿々風吹く世の為に、皆で心を繋ぎ合って進み行きましょう。


 (令和2年5月31日 立教180年記念祝賀大祭・納祭)
 (教主講話集『寿々風』創刊号に収録)


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■ 立教180年記念大祭 宵宮神事・大祭式典の様子 (令和2年4月10、11、12、18、19日、5月31日)

宵宮神事の様子 (令和2年4月10日)

大祭式典の様子 (令和2年4月11日)

大祭式典の様子 (令和2年4月12日)[本祭]

大祭式典の様子 (令和2年4月18日)

大祭式典の様子 (令和2年4月19日)

大祭式典の様子 (令和2年5月31日)[納祭]


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